サンゴの摂餌による微量金属元素の濃集. 藤ヶ崎 将也, 藤村 弘行, 安田 直子, 塩見 砂理菜, & 樋口 富彦 November, 2020.
abstract   bibtex   
【緒言】高濃度の金属元素は一般にあらゆる生物にとって有害であるが,微量な金属元 素は生体内の様々な代謝過程に必要不可欠となっている。サンゴの白化初期に生成する ROS を消去する抗酸化酵素にスーパーオキシドディスムターゼ(SOD)があり, 酵素の 活性中心に Cu, Zn,Mn および Fe を有している。Biscéré et al.(2018)は無機態の Fe と Mn をショウガサンゴ(Stylophora pistillat)に添加し高温に曝した結果, Mn が白化を低減させ, 光合成・石灰化速度を増加させることを報告している。これは Mn が光合成の電子伝達 系や SOD の活性中心に使われていることから,これらの機能の制限要素となっており、 添加によって機能が向上したことを示唆している。しかし,無機態金属元素を添加する ことはその毒性の強さから環境への影響が懸念される。 動物プランクトンなどに含ま れる有機物と結合した金属元素は、サンゴにとってより安全な食物として生体に取り込 むことが可能である。本研究では、動物プランクトンであるアルテミア(Artemia salina)に 金属酵母を与え、それをナンヨウミドリイシ(Acropora hyacinthus)に給餌し、安全にサン ゴ体内に金属を濃集させることを目的と する。 【方法】琉球大学熱帯生物圏研究センター瀬底研究施設にて,酵母を餌として与えたア ルテミア,Fe 含有酵母を与えたアルテミアおよび Mn 含有酵母を与えたアルテミアをサ ンゴへ給餌した。また無給餌のサンゴをコントロールとした。サンゴ生体内の 金属量 の評価については試料を酸分解して液状化したのち,ICP-MS を用いた誘導 結合プラ ズマ質量分析法及び,ICP-AES を用いた誘導結合プラズマ発光分析法で評価 した。 【結果・考察】サンゴの表面積当たりの Mn および Fe の含有量はコントロールで そ れぞれ 2.3 ng/cm2 と 47.9 ng/cm2 であった。Mn 含有量は Mn 酵母のアルテミアを 与 えたサンゴで 3.2 ng/cm2 と最も高く,Fe 含有量に関しても Mn 酵母のアルテミアを与え たサンゴが 126.2 ng/cm 2 と最も高かった。アルテミアにはもともとある一定量の Fe を含 んでおり,サンゴが Mn と Fe を複合的に摂取している可能性が示唆された。
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活性中心に Cu, Zn,Mn および Fe を有している。Biscéré et al.(2018)は無機態の Fe と Mn
をショウガサンゴ(Stylophora pistillat)に添加し高温に曝した結果, Mn が白化を低減させ,
光合成・石灰化速度を増加させることを報告している。これは Mn が光合成の電子伝達
系や SOD の活性中心に使われていることから,これらの機能の制限要素となっており、
添加によって機能が向上したことを示唆している。しかし,無機態金属元素を添加する
ことはその毒性の強さから環境への影響が懸念される。 動物プランクトンなどに含ま
れる有機物と結合した金属元素は、サンゴにとってより安全な食物として生体に取り込
むことが可能である。本研究では、動物プランクトンであるアルテミア(Artemia salina)に
金属酵母を与え、それをナンヨウミドリイシ(Acropora hyacinthus)に給餌し、安全にサン
ゴ体内に金属を濃集させることを目的と する。
【方法】琉球大学熱帯生物圏研究センター瀬底研究施設にて,酵母を餌として与えたア
ルテミア,Fe 含有酵母を与えたアルテミアおよび Mn 含有酵母を与えたアルテミアをサ
ンゴへ給餌した。また無給餌のサンゴをコントロールとした。サンゴ生体内の 金属量
の評価については試料を酸分解して液状化したのち,ICP-MS を用いた誘導 結合プラ
ズマ質量分析法及び,ICP-AES を用いた誘導結合プラズマ発光分析法で評価 した。
【結果・考察】サンゴの表面積当たりの Mn および Fe の含有量はコントロールで
 そ
れぞれ 2.3 ng/cm2
 と 47.9 ng/cm2
 であった。Mn 含有量は Mn 酵母のアルテミアを
 与
えたサンゴで 3.2 ng/cm2
 と最も高く,Fe 含有量に関しても Mn 酵母のアルテミアを与え
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	author = {{藤ヶ崎 将也} and {藤村 弘行} and {安田 直子} and {塩見 砂理菜} and {樋口 富彦}},
	collaborator = {{宮島 利宏} and {Sylvain Agostini} and {湯山 育子} and {中村 隆志}},
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	year = {2020},
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