褐虫藻のルビスコ活性の測定. 塩見 砂理菜, 藤村 弘行, 安田 直子, 塩見 砂理菜, 樋口 富彦, 宮島 利宏, Sylvain Agostini, 湯山 育子, & 中村 隆志 November, 2020.
abstract   bibtex   
サンゴ礁は,近年問題となっている地球温暖化にともなう気候変動により衰退の危機 に直面している。異常な高水温と強い光によって引き起こされるサンゴの白化現象もそ の一つである。白化が長期間続くと栄養状態が悪化してサンゴは死滅する。白化は褐虫 藻の光合成系が極度に光阻害を受けた状態と考えられているが詳しいメカニズムは分か っていない。光阻害は強い光などにより光合成の電子伝達系に過剰な電子が流れること によって活性酸素種が生成し,光合成を担うタンパク質が損傷することで生じる。 Wooldridge(2014)は強光によりカルビン回路で使われる CO2 が不足することで,電子伝 達系への酸化型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADP+)とアデノシン二 リン酸(ADP)の供給が追いつかなくなり,結果として過剰の電子が電子伝達系に流れる とする白化モデルを提案した(CO2 制限モデル)。しかし,海水中には CO2 のもととなる 多量の炭酸水素イオンが存在していることや,高水温と光の両方が白化に関係している ことを考えると,初期の白化を CO2 不足のみに起因することはできない。カルビン回路 で CO2 を固定する酵素ルビスコ(Rubisco)は 30°C以上の高水温になると不活性となり,機 能しなくなることが知られている(Lilley et al. 2010)。したがって,高水温によって引き起 こされたルビスコ活性の低下がカルビン回路の循環低下と NADP+や ADP の供給不足を 引き起こし,最終的に光合成系に過剰な電子が流れる状態を作り出すと考えられる(本研 究における仮説:Rubisco 活性低下モデル)。Lilley et al. (2010)は,培養褐虫藻を用いて Rubisco のオキシゲナーゼ反応を測定したものであり,サンゴに共生する褐虫藻の活性 やカルボキシラーゼ反応を調べた研究はみられない。サンゴに共生する褐虫藻の Rubisco 活性を測定することは白化のメカニズムを研究する上で極めて重要であるが, Rubisco 活 性は細胞から抽出後に急速に失われるため,この分野の研究はほとんど進んでいない。 したがって,本研究では,まずほうれん草中に含まれる Rubisco 活性をオキシゲナー ゼ反応の Mn2+ 化学発光を用いて測定し,同様の方法でサンゴに共生している褐虫藻の Rubisco 活性の測定を試みたので,その結果について報告する。
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によって活性酸素種が生成し,光合成を担うタンパク質が損傷することで生じる。
Wooldridge(2014)は強光によりカルビン回路で使われる CO2 が不足することで,電子伝
達系への酸化型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADP+)とアデノシン二
リン酸(ADP)の供給が追いつかなくなり,結果として過剰の電子が電子伝達系に流れる
とする白化モデルを提案した(CO2 制限モデル)。しかし,海水中には CO2 のもととなる
多量の炭酸水素イオンが存在していることや,高水温と光の両方が白化に関係している
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